スライディングモード制御(SMC: Sliding Mode Control)は、ロバスト性の高さと実装のシンプルさから、近年も以下のような実用的な分野で幅広く使われている。以下に最近の代表的な実用例をいくつか挙げます(2020年代以降の研究・開発・製品化例に基づく)。
*電気自動車(EV)用モータ制御
対象:PMSM(永久磁石同期モータ)、誘導モータなどのトルク制御や速度制御。
利点:モータのパラメータ変動(温度など)や負荷変動に強く、高速応答が可能。
実例:インバータ実装向け SMCベースの電流制御器。
*ドローン/マルチローター飛行制御
対象:姿勢制御(ピッチ・ロール・ヨー)、高度制御、軌道追従。
利点:外乱(風)やモータ不均衡に対するロバスト性。
実例:DJI などの小型UAVで、スライディングモードとPIDのハイブリッド制御を導入する研究。
*ロボットアームの高精度制御
対象:関節角制御、力制御。
利点:摩擦・バックラッシュ等の非線形要素を含む高精度な姿勢制御が可能。
実例:産業用ロボットでのSMCベースの力制御応用研究。
*再生可能エネルギー系(風力・太陽光インバータ)
対象:インバータ制御、DC-DCコンバータ、最大電力点追従(MPPT)。
利点:外乱やパラメータ変動に対して高い安定性を実現。
実例:分散型太陽光発電システムにおける滑り面ベースのMPPTアルゴリズムなど。
*自動運転・ADAS制御(車両横滑り防止など)
対象:車両の横方向制御(横滑り防止・車線保持)、加減速制御。
利点:摩擦係数変化やタイヤ特性の変動に対してもロバスト。
実例:車両横滑り抑制のロバスト制御ロジックに SMC が使われている例。

スライディングモード制御 目次

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1.スライディングモード制御の基本
2.線形系のスライディングモード制御

参考文献

野波健蔵、田 宏奇 「スライディングモード制御 - 非線形ロバスト制御の設計理論 -」コロナ社 1994年