10. 相互誘導と自己誘導
相互誘導
コイル間の相互誘導とは、一つのコイルに流れる電流が、他のコイルに電気的な影響を与える現象である。具体的には、一方のコイルに電流を流すと、コイルの周りに磁場が発生する。この磁場による他方のコイルを貫く磁束の変化は、他方のコイルに電磁誘導を起こし起電力を発生する。このような相互作用は、電力変換や通信などの様々な電気機器で利用されている。また、変圧器や変成器などでも相互誘導が利用されており、電力の変換や信号の伝送に広く使われている。
※コイルAとコイルBは空間的に離れていることに注意
図「相互誘導の動作」で考える。まず、コイルAとコイルBを用意し、コイルAで発生した磁束がコイルBを貫くように配置する。
1)コイルAに電流を流して磁束を発生させる。
2)これにコイルBを近接させると、コイルBは、コイルAの発生した磁束と鎖交する。
3)コイルAの電流を時間的に変化させると、コイルAで発生する磁束が時間的に変化する。
4)コイルBの鎖交磁束数が時間的に変化するので、電磁誘導により、コイルBに誘導起電力が発生する。
コイルAの電流が時間的に変化すると、コイルBに起電力を生じる。これを相互誘導作用という。
相互誘導の起電力の大きさ、および方向は、電磁誘導の法則(ファラデーの法則とレンツの法則)に従う。
自己誘導
コイルの自己誘導とは、一つのコイルの中に流れる電流が、そのコイル自身に影響を与える現象である。具体的には、コイルに電流を流すと、その中に磁場が発生し、その磁場がコイル自身に影響を与え、そのコイル自体に起電力が誘導される。
自己誘導によって誘導される起電力は、電磁誘導の法則によって与えられる。この法則によれば、誘導起電力はコイルの自己誘導係数と、コイルに流れる電流の変化率に比例する。自己誘導によって誘導された起電力は、電気回路の素子の一つインダクタとして機能し、電流の変化を妨げる働きをする。自己誘導は回路に流れる電流が急激に変化する場合、それを抑制するように働くため、高電圧の電気機器において重要な役割を果たす。また、この自己誘導を利用したインダクタは、フィルタなどの回路に広く利用されている。
コイルに電流を流すと磁束が発生するが、この磁束は、このコイル自身と鎖交することになる。このとき、コイルに流す電流を時間的に変化させると、発生する磁束も時間的に変化するので、このコイル自身と鎖交する磁束も時間的に変化することになるので、コイルに誘導起電力を生じる。
このため、コイルに流れる電流が時間的に変化すると、コイル自身に起電力を生じることになる。これを自己誘導作用という。
自己誘導による起電力の大きさ、および方向は、電磁誘導の法則(ファラデーの法則,レンツの法則)に従う。
図「自己誘導の動作」で考えると、コイル電流\(I\)を図の赤矢印方向で増加させると磁束\(\phi\)が白矢印の方向に増加する。この磁束はコイル自身に鎖交し、時間とともに増加するので、起電力\(e\)を発生させる。レンツの法則より、この起電力の方向は磁束の変化を妨げる方向(図の\(+e\))となる。
図\((a)\)のように電流\(I\)が一定の場合、磁束\(\phi\)は変化しないので、起電力は\(0\)となる。
図\((a)\)のように電流\(I\)が減少すると磁束\(\phi\)が減少する。この磁束\(\phi\)が減少を妨げる方向に起電力が発生する。この起電力の方向は電流が増加するときと逆となる。(図の\((b)\)参照)
インダクタ(コイル)の動作
自己誘導を利用した電気回路の重要な素子がインダクタ(コイル)である。
図「インダクタに電圧を印加した瞬間の動作」より、SW(スイッチ)をONするまでは電流は流れていないので、SW ONした瞬間にインダクタに電圧が印可され電流が流れようとするが、自己誘導起電力は電流の増加を妨げる方向に生起するので、電流が流れていなかった状態を維持するように動作する。
図「インダクタの印加電圧を0にした瞬間の動作」より、SW(スイッチ)をOFFするまでは電流は流れているので、SW OFFした瞬間は、自己誘電起電力は電流の減少を妨げる方向に生起するので、電流が流れている状態を維持するように動作する。この場合、SW間に電源電圧以上の大きな電圧が掛かることになる。
インダクタの働き
インダクタは電流の変化を妨げる。
インダクタは、変動する電流に対して、変動を阻止する方向に起電力を発生させ、電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄えるという働きがあり、直流信号は通しやすいが、高い周波数の信号は通しにくいという性質を持っている。
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