25. MOSFETの増幅回路
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用した増幅回路は、アナログ信号を増幅するための回路である。MOSFETは、増幅やスイッチングなどの用途に広く使用されている。以下に、MOSFETを使用した基本的な増幅回路として、MOSFETのソース端子を共有するソース接地増幅回路を考える。入力信号はゲート端子に接続され、出力信号はドレイン端子から取り出される。また、ソース端子にバイアス電圧をかける。
MOSFETソース接地増幅回路
図1は、「MOSFETの\(V_{DS}-I_D\)特性(nチャネルエンハンスメント形)」である。MOSFETはその構造から、ゲートへの流入電流は極めて小さい。この利点を生かすため、MOSFETは、多くの場合、ソース接地で使用される。つまり、ゲートを入力とし、ドレインを出力として、ソースを入出力の共通端子(接地端子)とする。図2が、「MOSFETの増幅回路」の構成例である。
図2において、FETの入力インピーダンスは、\(\infty\)と見なせるから、ゲート電圧\(V_{GS}\)は、$$V_{GS} = \frac{R_{G2}}{R_{G1} + R_{G2}} V_{DD}$$となる、これが、ゲートのバイアス電圧、つまり動作点の電圧\(V_{GSQ}\)となる(図1の赤点)。また、ドレイン電流\(I_D\)は、$$V_{DD} - R_D I_D = V_{DS} \\ I_D = - \frac{1}{R_D} V_{DS} + \frac{1}{R_D} V_{DD}$$という式で表せる。この式を直流負荷線という(図1の青線)。動作点を\(V_{GSQ}\)を満たす\(V_{DSQ}\)と\(I_{DQ}\)に設定すると、ドレインに接続する抵抗\(R_D\)を$$R_D= \frac{V_{DD} - V_{DSQ}}{I_{DQ}} \;[\Omega]$$と設計できる。
増幅動作では、入力信号電圧\(v_i\)がカップリングコンデンサ\(C_1\)を介してゲートに加わるので、動作点近傍でのゲート電圧\(V_{GS}\)は、\(V_{GS} = V_{GSQ} + v_i\)となる。その結果、ドレイン電流\(I_D\)は、\(I_D = I_{DQ} + i_d\)となる。従って、ドレイン電圧\(V_{DS}\)は、$$V_{DS} = V_{DD} - R_D(I_{DQ} + i_d)\;[V] $$である。出力電圧\(v_o\)は、カップリングコンデンサ\(C_2\)を介して、$$v_o = -R_{AL} i_d \;[V] \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; R_{AL} = \frac{R_D R_L}{R_D + R_L}$$と得られる。負号(\(-\))は、\(v_i\)に対して、\(v_o\)が逆相になることを表している。
ソース接地増幅回路の等価回路
図2から交流回路を求めるには、カップリングコンデンサ\(C_1,C_2\)と直流電圧源\(V_{DD}\)を短絡する。これより、図3「ソース接地増幅回路の交流回路」が得られる。このとき、$$v_{gs} = v_i \;\;\;\;\;v_o = -R_{AL} i_d$$である。
この交流回路において、MOSFETの部分を等価回路に置き換えると、図4「ソース接地増幅回路の等価回路」が得られる。\(v_{gs} = v_i\)であり、\(J=g_m v_{gs}\)なので、出力電圧\(v_o\)は、$$v_o = - g_m v_i \frac{r_d R_{AL}}{r_d + R_{AL}}$$となる。従って、電圧増幅度\(A_v\)は、$$A_v = \frac{v_o}{v_i} = - g_m \frac{r_d R_{AL}}{r_d + R_{AL}}$$である。負号(\(-\))は、\(v_i\)に対して、\(v_o\)が逆相になることを表している。
ソース接地増幅回路の動作(LTspice)
図5は、MOSFETソース接地増幅回路のLTspice回路図である。ゲートのバイアス電圧\(V_{GS}\)は、$$V_{GS}=\frac{R_{G2}}{R_{G1} + R_{G2}} V_{DD} = 1.67 \;V$$である。入力電圧\(v_i\)は、振幅 10 mV、周波数 1kHzの正弦波である。
図6がシミュレーション結果で、出力電圧\(v_o\)は、振幅 700 mV、周波数 1 kHzの正弦波で、入力電圧とは逆相となっている。