4. 微分(微積分学)

微分法

ニュートンは、瞬間における速度や加速度を定義するために微分の概念を導入した。時間の関数をグラフに描いたとき、その曲線への接線の勾配を微分係数という。ライプニッツは、独立変数の微小変化に対する関数の変化の比率を考えた。その極限を微分商という。両者は同じものとなるが、その用語は微分概念の2つの側面を表している。

図1 微分係数

初等関数のような普通に考える関数\(y=f(x)\)は、ほとんどの点で微分可能である。つまり、$$\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\Delta y}{\Delta x} \equiv \lim_{\Delta \rightarrow 0} \frac{f(x + \Delta x) - f(x)}{\Delta x} \;\;\; \cdots (1)$$が存在する。微分可能であれば連続であるが、その逆は必ずしも成立しない。また、式(1)を\(x\)の関数と考えるとき、\(y=f(x)\)の導関数と呼ぶ。
導関数の導関数を2階導関数という。\(f''(x) ,\;\; d^2y/dx^2\)などと記す。また、$$\frac{d^2y}{dx^2} \equiv \left(\frac{d}{dx}\right)^2 y $$である。

微分の商

\(\frac{dy}{dx}\)はライプニッツの記法で、式(1)のように極限をとっているので、本来、\(dy\)と\(dx\)の商ではないが、多くの場合、商であるかのように(微分商)計算を行うことが可能である。\(\Delta x , \; \Delta y\)は、小さいが\(0\)ではない数と考えるが、これに対して、微分記号\(dx,\;dy\)は無限小とする特別な記号であり、具体的な数は代入できない。この無限小の微分記号に関しては、以下の(1)、(2)のように考える。
(1)加算では高次の微小量は無視する。例:\(x + dx \rightarrow x ,\;\; dx + dx^2 \rightarrow dx\)
(2)同じ次数の微小量の比だけを有意とする。例:\(dx/dy ,\;\;(dy/dx)^2,\;\;d^2z/dxdy\)
なお、表記法としては、\(dx^2 = (dx)^2, \;\;\;d^2 x = d(dx)\)とする。

(1)、(2)の適用例として、\(y=f(x) = x^2\)の微分を考えると。$$dy = (x +dx)^2 - x^2 = x^2 + 2x dx + dx^2 -x^2 = 2x dx + dx^2 = 2 x dx , よって、\frac{dy}{dx} = 2x$$となる。

偏微分と全微分

偏微分とは、複数の独立変数がある関数の場合、他の変数を定数と仮定して、特定の1変数に関する導関数を求めることである。例えば、\(y = f(x,u\)において、\(x\)に関する偏微分は、\(u\)を固定したときの\(x\)に関する微分を考え、\(\partial y /\partial x\)と表記する。他の変数が無い場合にも偏微分の記号を使うと、$$dy = \frac{\partial y}{\partial x} dx \;\;\; \cdots (2)$$と微分を表せる。なお、微分は、\(dx,\;dy\)と書けるが、\(\partial x ,\; \partial y\)は書けない。偏微分は、複数の独立変数のセットを指定しないと意味がないからである。偏微分記号\(\partial\)は導関数としてしか使わない。
式(2)において、\(dx\)を\(X-x\)に、\(dy\)を\(Y-y\)に置き換えると、(\(X,Y\))座標に関して点(\(x,y\))における接線の方程式になる。これを多変数の場合に拡張すると、全微分の考え方になる。例えば、曲面\(z = f(x,y)\)が点(\(x,y\))において接平面をもつなら、その全微分、$$dz = \frac{\partial f}{\partial x} dx + \frac{\partial f}{\partial y}dy \;\;\; \cdots (3)$$が存在し、\(dx\)を\(X-x\)、\(dy\)を\(Y-y\)、\(dz\)を\(Z-z\)に置き換えれば、接平面の方程式になる。また、\(z = f(x,y)\)なので式(3)は、$$df = \frac{\partial f}{\partial x} dx + \frac{\partial f}{\partial y}dy = \left(dx \frac{\partial }{\partial x} + dy \frac{\partial }{\partial y}\right) f$$と、より自然に書ける。\(f\)は全微分可能であれば良いので、両辺から外して、$$d = dx \frac{\partial }{\partial x} + dy \frac{\partial }{\partial y} = \begin{bmatrix} dx & dy \end{bmatrix} \begin{bmatrix} \frac{\partial }{\partial x} \\ \frac{\partial }{\partial y} \end{bmatrix}$$と書ける。これは、\(n\)次元に拡張できる。

微分の基本公式

・線形性
微分演算は線形演算である。一次結合の導関数は、導関数の一次結合に等しい。\(a,\;b\)を定数として、\(f(x),\;g(x)\)を\(x\)の関数として、$$\frac{d}{dx}\left( a f(x) + b g(x) \right) = a \frac{d f(x)}{dx} + b \frac{d g(x)}{dx} \;\;\; \cdots (4)$$である。
・関数の積の微分(ライプニッツ規則
$$\frac{d}{dx} \left(f(x) g(x) \right) = \frac{df(x)}{dx} g(x) + f(x) \frac{d g(x)}{dx} \;\;\; \cdots (5)$$(微分そのまま、そのまま微分^^;)が成立する。
・合成関数(関数の関数)の微分
$$\frac{d}{dx} f\left(g(x) \right) = \frac{d g(x)}{dx} \frac{d f \left(g(x)\right)}{dg(x)} \;\;\; \cdots (6)$$
例えば、$$\frac{d}{dx}\left(\frac{1}{x}\right) = - \frac{1}{x^2}$$なので、$$\frac{d}{dx}\left(\frac{1}{g(x)}\right) = -\frac{1}{\left[g(x)\right]^2} \frac{d g(x)}{dx}$$となる。これと、式(5)を組み合わせると商の微分の公式が得られる。
・商の微分の公式
$$\frac{d}{dx} \left(\frac{f(x)}{g(x)}\right) = \frac{ \frac{d f(x)}{dx} g(x) - f(x) \frac{d g(x)}{dx}}{\left[g(x) \right]^2}$$
・陰関数\(f(x,y) = 0\)の微分
全微分の式(3)で\(z=0\)とおくと、$$0 = \frac{\partial f}{\partial x} dx + \frac{\partial f}{\partial y}dy$$より、$$\frac{dy}{dx} = - \frac{ \partial f / \partial x}{\partial f / \partial y}$$となる。

高階導関数

微分の基本公式を使うと、基本関数の導関数が分かっていれば、それを組み合わせて構成される関数の導関数は、すべて計算できる。\(y=f(x)\)の導関数の導関数も計算できる。\(n\)階の導関数は、\(y^{(n)} ,\; f^{(n)}(x), \; d^{n}y/dx^n\)などと表記する。
式(5)を繰り返し適用すると$$\frac{d^2}{dx^2}\left( f(x) g(x) \right) = \frac{d^2 f(x)}{dx^2}g(x) + 2\frac{df(x)}{dx}\frac{d g(x)}{dx} + f(x) \frac{d^2 g(x)}{dx^2} $$となるので、一般形は、$$\frac{d^n}{dx^n} \left(f(x) g(x) \right) = \sum_{k=0}^n {}nCk \frac{d^{n-k} f(x)}{dx^{n-k} }\frac{d^k g(x)}{dx^k}$$である。ここで、\( {}nCk \equiv n!/(k!(n-k)!)\)は組み合わせの数(2項係数)である。

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