12. 高階微分方程式(微分方程式)
高階微分方程式とは、微分の次数が2以上の微分方程式を指す。たとえば、3階の微分方程式は$$y^{(3)} + p(x)y'' + q(x)y' + r(x)y = g(x)$$のような形式となる。ここで、\(y^{(3)}\)は3階微分、\(y''\)は2階微分、\(y'\)は1階微分を表す。このような方程式を解く方法は、その形状や種類に応じて異なる。
高階微分方程式が解析的に解けるのは稀である。1階は階数を下げられる特別な場合を考える。
並進不変性がある場合
並進不変性は、ある座標変換 \(x \mapsto x + c\)を施しても方程式の形が変わらない性質を指す。\(t \mapsto t+c\)、または、\(x \mapsto x+c\)という変換のもとに不変な微分方程式というのは、\(t\)、または、\(x\)をあらわに含まないということである。ニュートンの運動方程式$$m\frac{d^2 x}{dt^2} = F(x)$$は、独立変数として\(t\)を使うが\(t\)をあらわに含まない。
\(x\)をあらわに含まない微分方程式$$f(t,\;x',;\cdots,\;x^{(n)})=0$$は、\(x' = z\)とおけば、\(z\)に関する\(n-1\)階の微分方程式となる。
つぎに、\(t\)をあらわに含まない微分方程式は、\(t\)の代わりに\(x\)を独立変数にとれば、上記の場合に帰着する。例えば、2階微分方程式$$f(x,\;x',\;x'')=0$$を考えると、$$x' = \frac{dx}{dt} = \left(\frac{dt}{dx}\right)^{-1} = \frac{1}{t'} \\ x'' = \frac{dx'}{dt} = \frac{dx}{dt}\frac{d}{dx}\left(\frac{1}{t'}\right) = \frac{1}{t'}(-1)\frac{t''}{t'^2} = - \frac{t''}{t'^3}$$なので、\(f(x,\;x',\;x'')=0\)は、$$f\left(x,\; \frac{1}{t'},\; -\frac{t''}{t'^3}\right)=0$$となる。
スケール変換不変性がある場合
\(t \mapsto ct\)、または、\(x \mapsto cx\)という1変数の変換のもとに不変な微分方程式は、\(t=e^u\)、または、\(x = e^v\)という変数変換により、並進不変性の場合となる。
例えば、\(f(x,\; tx',\;t^2 x'')=0\)という微分方程式は、\(t=e^u\)とおくと、$$\frac{dt}{du} =e^u ,\;\;\;\; dt = e^u du,\;\;\;\; tx' = t\frac{dx}{dt} = e^u \frac{dx}{e^u du} = \frac{dx}{du}$$また、$$\frac{dx}{dt} = \frac{dx}{du} \cdot \frac{du}{dt}$$さらに2階微分は、$$\frac{d^2x}{dt^2} = \frac{d}{dt}\left(\frac{dx}{dt} \right) = \frac{d}{dt} \left(\frac{dx}{du}\cdot \frac{du}{dt} \right)$$ここで、\(\frac{du}{dt}\)を\(u\)の関数として微分すると、$$\frac{d^2x}{dt^2} = \frac{d^2x}{du^2}\left(\frac{du}{dt}\right)^2 + \frac{dx}{du}\frac{d^2u}{dt^2}$$さらに、
$$t=e^u,\;\;\; u= \log t,\;\;\; \frac{du}{dt}=\frac{1}{t}= e^{-u},\;\;\;\; \frac{d^2 u}{dt^2}=-\frac{1}{t^2} = -e^{-2u}$$の関係を使うと $$t^2 x'' = e^{2u} \frac{d^2x}{dt^2} = e^{2u}\left\{ \frac{d^2x}{du^2}\left(\frac{du}{dt}\right)^2 + \frac{dx}{du}\frac{d^2u}{dt^2}\right\} \\ = e^{2u}\left(\frac{d^2 x}{du^2} e^{-2u} - \frac{dx}{du} e^{-2u}\right) = \frac{d^2x}{du^2} - \frac{dx}{du}$$ 以上より、$$f\left(x,\; \frac{dx}{du},\;\frac{d^2x}{du^2} - \frac{dx}{du}\right) = 0$$という\(u\)をあらわに含まない微分方程式となる。
\(t \mapsto ct\)と\(x \mapsto cx\)を同時に行う同次スケール変換のもとに不変な微分方程式$$f(t^{-1} x,\; x',\; tx'',\;\cdots , \; t^{n-1} x^{(n)})=0$$は、\(x = tv\)とおけば、\(t\)の1変数スケール変換不変な場合になる。
積分因子
ニュートンの運動方程式\(m\frac{d^2x}{dt^2} = F(x)\)を$$mx'' - F(x)=0$$と書き、両辺に\(x'\)を乗じると左辺は、$$x'(mx'' - F(x)) = \frac{d}{dx} \left(\frac{mx'^2}{2} - \int F(x)dx\right)$$となり、積分できる。このように適当な因子を乗じると微分方程式の全体が何かの導関数になっているようにできれば、積分できる。このような因子を積分因子という。この積分因子を見つけるのは通常、困難であるが、以下のリューヴィルの微分方程式では、簡単に見つかる。$$x'' + f(t)x' - g(x)x'^2 = 0$$この場合、両辺に\(1/x'\)を乗じると、左辺は$$\frac{x''}{x'} + f(t) - g(x)x' = \frac{d}{dt}\left(\log x' + \int f(t) dt - \int g(x) dx \right)$$となり、積分ができる。