15. 特殊関数Ⅰ(微分方程式)

オイラーのガンマ関数やベータ関数は、パラメータの関数である。つまり積分表示で定義されるが、積分変数とは関係のない変数の関数である。このような関数で有名なものがリーマンのゼータ関数$$\zeta(s)= \sum_{n=1}^\infty n^{-s}$$である。しかし、大部分の特殊関数は、微分方程式の解として定義される。

超幾何微分方程式

無限遠点を含めて、全ての特異点が確定特異点であるような微分方程式をフックス型微分方程式という。これは広義のべき展開で解が求められので、特殊関数を広義のべき級数で定義したことになる。そのような関数で最も重要なのが、ガウスの超幾何関数である。超幾何微分方程式は、式(1)の形で書かれる。$$t(1-t)x'' + \{c-(a + b + 1)t\}x' - abx = 0 \;\;\;\cdots (1)$$式(1)から\(t = 0 ,\; t=1\)が確定特異点であることは明らかである。さらに、式(1)で\(1/t = u\)とおくと、\(t=1/u\)なので\(\frac{dt}{du} =-\frac{1}{u^2}\)となり、$$x′(t)=\frac{dx}{du}\cdot\frac{​du}{dt​}=−u^2\cdot x′(u) \\ x′′(t) = \frac{d}{dt}(x′(t)) = \frac{d}{du}​(−u^2 x′(u))\cdot \frac{du}{dt} ​=u^4 x′′(u) + 2u^3 x′(u)$$である。、これを式(1)に代入し\(u\)の関数として整理すると、$$u(u−1)\left(u \frac{d^2x}{du^2} ​+ 2\frac{dx}{du} \right) + u(a+b−cu+1)\frac{dx}{du}​−abx=0$$となる。この式より、確定特異点は\(u=0\)つまり\(t = \infty\)が確定特異点である。まとめると、式(1)の確定特異点は、\(t=0,\;t=1,\; t=\infty\)である。ここで、$$x(t) = \sum_{n=0}^{\infty} \alpha_n (t - a)^{\rho + n} \;\;\;\; (\alpha_0 \neq 0) \;\;\; \cdots (2)$$とおいて、これを式(1)に代入すると、$$\sum_{n=0}^\infty \left[ (\rho + n)(\rho + n -1)\alpha_n (t^{\rho + n -1} - t^{\rho + n}) + (\rho + n)\alpha_n ( c t^{\rho + n -1} - (a+b+1)t^{\rho +n}) - a b \alpha_n t^{\rho + n} \right] =0$$となる。
\(t^{\rho -1}\)の係数から、決定方程式は式(3)となる。$$\rho(\rho - 1 +c)=0 \;\;\;\cdots (3)$$よって、\(\rho = 0\)または、\(\rho=1-c\)である。次に\(x^{\rho +n} \;\;(n \geq 0)\)の係数から、漸化式 式(4)を得る。$$(\rho + n +1)(\rho + n +c)\alpha_{n+1} -\{(\rho +n)(\rho + n-1+a+b+1)+ab\}\alpha_n =0 \;\;\; \cdots(4)$$\(\rho =0\)の場合、\(c \neq 0,\; -1,\; -2,\ldots\)と仮定すると、式(4)より、$$\alpha_{n+1} = \frac{n(n+a+b)+ab}{(n+1)(n+c)} \alpha_n =\frac{(a+n)(b+n)}{(c+n)(n+1)} \alpha_n \;\;\; \cdots(5)$$となる。$$(L)_n = L(L+1)\cdots(L+n-1) = \frac{\Gamma(L+n)}{\Gamma(L)} \;\;\; \cdots (6)$$ 式(6)の記号を導入すると、\(\alpha_0 = 1\)と規格化し、式(5)の解は、$$\alpha_n = \frac{(a)_n (b)_n}{(c)_n n!}$$と表せる。これより、式(1)の特殊解は、$$x_1 = F(a,b, ;c ;t)=\sum_{n=0}^\infty \frac{(a)_n (b)_n}{(c)_n n!}t^n =\sum_{n=0}^\infty \frac{\Gamma(a+n) \Gamma(b+n) \Gamma(c)}{\Gamma(a) \Gamma(b) \Gamma(c+n) n!} t^n$$となる。右辺の級数を超幾何級数、超幾何級数で定義される解析関数\(F(a,b, ;c;t)\)をガウスの超幾何関数という。

幾何級数と超幾何級数

幾何級数は次の形を持つ級数である。$$1 + r + r^2 + r^3 + \cdots$$ここで、項と項の間の比が一定(すなわち、公比 \(r\))であることが特徴である。
これに対して、超幾何級数(一般化された級数)は、項と項の間の比が一定ではなく、項ごとに変化する比率を持つように拡張されている。この拡張された比が特定のパターンに従う場合、その級数は「超幾何的」と呼ばれる。超幾何級数は次の形式で表される。$${}_2F_1(a, b, ; c; t) = \sum_{n=0}^\infty \frac{(a)_n (b)_n}{(c)_n} \frac{t^n}{n!}$$ここで \((a)_n\) はポッホハマー記号(または昇冪冪乗)を表し、次のように定義される。$$(a)_n = a (a+1) (a+2) \cdots (a+n-1), \\ (a)_0 = 1$$この級数の各項において、項間の比は次のように変化する。$$\frac{\text{次の項}}{\text{現在の項}} = \frac{(a+n)(b+n)}{(c+n)(n+1)}t$$
(注)\({}_2F_1(a, b, ; c; t)\)の表記は、\((a)_n\)のような因子が分子に2個、分母に1個あることを明示するための表記である。

式(1)のもう一つの特殊解は、\(\rho = 1-c\)を式(4)に代入すると、$$\alpha_{n+1} = \frac{(a-c+n+1)(b-c+n+1)}{(-c+n+2)(n+1)}\alpha_n$$が求まる。よって、$$\alpha_n =\frac{(a-c+1)_n (b-c+1)_n}{(-c+2)_n n!}$$が得られる。ただし、\(c=2,3,\cdots\)のとき分母が0になるので除外する。よって、第2の特殊解は、$$x_2=t^{1-c}F(a-c+1, b-c+1, ; -c+2 ;t)$$である。ただし、\(c=1\)では\(x_1\)と一致するので、独立な解にはならない。結局\(c\)が整数でなければ、\(x_1,\;x_2\)によて式(1)の基本解系が与えられる。

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