5. 波動方程式が示すもの
※13. 波動方程式、12. 電磁波を参考にしてください。
波動方程式をまとめながら徒然に考えた。まさに凡夫の愚考である(笑)。
流体の3次元の波動方程式と電磁波の波動方程式は同じ様な微分方程式で表せるが、これは数学的な構造によるものなのか、物理現象の根本的な性質なのか?
流体の波動方程式と電磁波の波動方程式は、どちらも以下の一般的な波動方程式の形をとる。$$\frac{\partial^2 \phi}{\partial t^2} = c^2 \nabla^2 \phi$$この形の微分方程式は、エネルギーが媒質(空間)を介して伝播する系で一般的に現れる。数学的には、この方程式は線形偏微分方程式であり、波動の伝播を記述するために広く適用可能とされている。数学的な形が同じだからといって、それが単なる偶然や数学的理由だけで生じているわけではなく、流体波と電磁波がどちらも波としてエネルギーを運ぶ現象であることが、同じ構造の方程式を生み出していると考えられる。流体波も電磁波も、基本的には、復元力(弾性力 or 電場・磁場)、慣性(密度による質量 or 電場・磁場の時間変化) の相互作用によって波が発生している。つまり、数学的な形が同じになるのは、波が伝わる基本的なメカニズムが共通しているからと言える。従って、数学的な構造の類似性は、物理現象の根本的な性質の結果として生じていると考えるのが適切であろう。
では、物理現象の根本的な性質の結果ということであれば、観測者の物理現象の捉え方の問題でもあるように思えるが、どうだろうか?
物理現象をどのように捉えるかによって、その数学的な記述が変わる可能性があるのではないだろうか。つまり、波動方程式という形で流体波や電磁波を記述するのは、私たちの物理現象の理解の枠組みによるものとも言えるだろう。波動方程式の形が共通しているのは、物理現象を「波動」として捉える視点を持っているからとも考えられる。流体波では、圧縮性の媒質における圧力・密度の変動を波として記述するし、電磁波では、電場と磁場の相互作用を波として記述する。これらの記述は、どちらも「ある物理量の変化が空間と時間を通じて伝播する現象」を数学的にモデル化した結果である。しかし、これは観測者が波動という枠組みで物理現象を整理していることによるとも言えるだろう。ここで重要なのは、波動方程式の形が普遍的な物理法則の結果なのか、それとも人間の認識の枠組みに依存しているのかという点である。波動方程式が観測者の捉え方に依存している場合、物理現象はより根本的には場の理論や非線形方程式で記述できるかもしれない。観測者が「波として捉えやすい」から波動方程式の形が一般化されている可能性がある。例えば、量子力学における波動関数\(\psi(x,t)\)も波動方程式に従うが、これは「粒子を確率波として捉える」視点があるからとも考えられる。もし異なる視点で物理を記述するなら、異なる形式の方程式を導くことも可能かもしれない。そういった観点から、異なった視点の物理の再構築(拡張)だけでなく、数学の再構築も新たな文明を開くのに必要なのかもしれない。