14. 2階線形微分方程式(微分方程式)

係数関数の基本解系による表示

式(1)の2階同次線形微分方程式の基本解系を\(\{x_1,\; x_2\}\)とする。$$x'' + p_1(t)x' + p_2(t) x = 0 \;\;\; \cdots (1)$$ 係数関数\(p_1(t),\;p_2(t)\)は、基本解系で書き表すことができる。
仮定から、$$x_1 '' + p_1 x_1' + p_2 x_1 = 0 \\x_2'' + p_1 x_2' + p_2 x_2 = 0 \;\;\; \cdots (2)$$式(2)の上式に\(x_2\)を乗じ、下式に\(x_1\)を乗じて、それらの差をとると\(p_2\)が消去され、$$p_1 = -\frac{x_1 x_2'' - x_2 x_1''}{x_1 x_2' - x_2 x_1'} = -\frac{W'}{W} = -\frac{d}{dt} \log W \;\;\; \cdots (3)$$を得る。ここで、\(W\)はロンスキアンである。さらに、$$W = x_1 x_2' - x_2 x_1' =x_1^2 \frac{d}{dt}\left(\frac{x_2}{x_1}\right)$$と書け、式(3)は、$$p_1 = - \frac{d}{dt}\log\left\{x_1^2 \frac{d}{dt}\left(\frac{x_2}{x_1}\right)\right\} = -2\frac{d \log x_1}{dt} - \frac{d}{dt} \log \left\{ \frac{d}{dt}\left(\frac{x_2}{x_1}\right)\right\}$$となる。\(p_1\)を既知とすると、式(2)の上式から、$$p_2 = -\frac{x_1''}{x_1} - p_1\frac{x_1'}{x_1} =-\frac{d}{dt}\left(\frac{d \log x_1}{dt}\right) - \left(\frac{d \log x_1}{dt}\right)^2 - p_1\frac{d \log x_1}{dt}$$となる。

ロンスキアン

ロンスキアンとは、微分方程式の解の線形独立性を調べるために用いられる特定の行列式のことである。特に、線形微分方程式の解が線形独立であるかどうかを判定する際に役立つ。関数 \(x_1(t), x_2(t), \cdots, x_n(t)\)が与えられたとき、これらの関数のロンスキアンは次のように定義される。$$W(x_1, x_2, \cdots, x_n)(t) = \begin{vmatrix} x_1(t) & x_2(t) & \cdots & x_n(t) \\ x_1'(t) & x_2'(t) & \cdots & x_n'(t) \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ x_1^{(n-1)}(t) & x_2^{(n-1)}(t) & \cdots & x_n^{(n-1)}(t) \end{vmatrix}$$ここで、\(x_i(t)\)は関数、\(x_i'(t)\)はその一階微分、\(x_i^{(n-1)}(t)\)はその \((n-1)\)階微分。
関数 \(x_1(t), x_2(t), \ldots, x_n(t)\)がある区間で線形独立であるかどうかは、ロンスキアンによって、\(W(x_1​,x_2​,\ldots,x_n​)(t) \neq 0 \)の場合、関数はその区間で線形独立であると判定できる。

確定特異点

微分方程式の標準形 \(x'' + p(t)x' + q(t)x = 0\)を考える。ここで \(p(t)\)と\(q(t)\)は連続関数である。ある点 \(a\)での特異点を以下の基準で分類する。
1.正則点: \(p(t)\)と\(q(t)\)が \(a\)で有限である場合。
2.特異点: \(p(t)\)または\(q(t)\)が\(a\)で無限大に発散する場合。
特異点がさらに、\((t - a)p(t)\) および \( (t - a)^2q(t)\)が \(t \to a\)で有限、の条件を満たすとき、確定特異点 と呼ぶ。

式(1)において、係数関数\(p_1(t),\; p_2(t)\)は、\(t=a\)の適当な近傍\(D\)内で、\(x=a\)を除き1価正則とする。このとき式(1)は、$$x_1(t)=(t-a)^\rho \phi(t) \;\;\; \cdots (4)$$ という形の解をもつ。ここで\(\phi(t)\)は\(\phi(a) \neq 0\)で、\(D\)において正則な関数である。

確定特異点では、解は通常、式(5)の形式で展開できる(フロベニウス法)。$$x(t) = \sum_{n=0}^{\infty} A_n (t - a)^{\rho + n} \;\;\; \cdots (5)$$ここで、\(\rho\)は根であり、特性方程式から決定される。

級数展開(フロベニウス法)による解法

微分方程式の式(1)が、確定特異点\(a\)を有する微分方程式が式(6)で書けるとする。$$(t-a)^2 x'' +(t-a)q(t)x' + r(t)x =0 \;\;\; \cdots (6)$$式(6) は確定特異点\(t=a\)での級数展開により解ける。\(q(t), \; r(t)\)は正則関数であるから、テイラー展開できる。つまり、$$q(t) = \sum_{n=0}^\infty b_n(t-a)^n \\ r(t) = \sum_{n=0}^\infty c_n(t-a)^n$$とする。また、式(4)から、$$x(t) = \sum_{n=0}^\infty \alpha_n (t-a)^{\rho + n} ,\;\;\;\; (\alpha_0 \neq 0)\;\;\; \cdots (7)$$のような解が存在するはずである。これらを式(6)に代入すると、$$\sum_{n=0}^\infty A_n (t-a)^{\rho + n} =0 \;\;\; \cdots (8)$$が得られる。ただし、\(A_n\)は添え字の和が\(n\)になるような項の総和である。式(8)から$$A_n =0 \;\;\; (n=0,1,2,\ldots)$$でなければならない。\(A_n\)を具体的に書き下すと、式(6)に\(q(t),\;r(t),\;x(t)\)を代入し、$$A_0 = \rho(\rho -1)\alpha_0 + b_0\rho \alpha_0 + c_0 \alpha_0 \\ = (\rho^2 + (b_0 -1)\rho +c_0)\alpha_0 = 0 \;\;\; (\alpha_0 \neq 0) \;\;\; \cdots (9)$$である。これは\(\rho\)に関する2次代数方程式で、\(\rho\)を決定するので決定方程式という。式(9)の解は、$$\rho = \frac{-b_0 + 1 \pm \sqrt D}{2}, \;\;\; D = (b_0 -1)^2 -4 c_0 \;\;\; \cdots (10)$$である。このようにして、式(9)、式(10)により、\(A_n\)における\(\alpha_n\)の係数を決定することで、式(7)の解を求める。

特定の種類の2階線形常微分方程式に対して級数展開が適用される解法のフロベニウス法は、特に確定特異点を持つ場合に有効である。フロベニウス法をベッセルの微分方程式に適用する例を示す。
次のベッセルの微分方程式を考える。$$t^2 x'' + t x' + (t^2 - \nu^2)x = 0$$ここで、\(\nu\)は定数、\(t = 0\)は確定特異点である。この式にフロベニウス法を適用する。
1.フロベニウス級数解の仮定
解を次のように仮定する。$$x(t) = \sum_{n=0}^\infty \alpha_n t^{\rho+n}$$ここで\(\rho\)は特性指数(不定元)、\(\alpha_n\)は未知の係数。
2.微分して代入
フロベニウス級数を代入するため、1階と2階の微分を計算する。$$x'(t) = \sum_{n=0}^\infty \alpha_n (n+\rho) t^{n+\rho-1}\\ x′′(t)= \sum_{n=0}^\infty \alpha_n (n+\rho)(n+\rho-1) t^{n+\rho-2}$$これらを微分方程式に代入する。
3.方程式に代入
微分方程式に代入すると、$$t^2 \sum_{n=0}^\infty \alpha_n (n+\rho)(n+\rho-1) t^{n+\rho-2} + t \sum_{n=0}^\infty \alpha_n (n+\rho) t^{n+\rho-1} + (t^2 - \nu^2) \sum_{n=0}^\infty \alpha_n t^{n+\rho} = 0 $$各項を整理して、すべて \(t^{n+\rho}\)の形に統一する。$$\sum_{n=0}^\infty \alpha_n (n+\rho)(n+\rho-1) t^{n+\rho} + \sum_{n=0}^\infty \alpha_n (n+\rho) t^{n+\rho} + \sum_{n=0}^\infty \alpha_n (t^2 - \nu^2)t^{n+\rho} = 0$$
4.特性方程式を求める
最低次の項(\(n = 0\))を考える。この項の係数は \(r\)に依存し、次の特性方程式を満たす。$$\rho(\rho-1) + \rho - \nu^2 = 0$$これを解くと、特性指数\(\rho\)は\(\rho = \pm \nu\)である。
5.漸化式を導出
\(n \geq 1\)の項について、係数をまとめると次の漸化式が得られる。$$\alpha_{n+1} = -\frac{\alpha_n [(n+\rho)^2 - \nu^2]}{(n+1)(n+1+\rho)}$$この式により\( \alpha_n\) を逐次計算できる。
6. 一般解の構成
特性指数 \(\rho_1 = \nu\)と\(\rho_2 = -\nu\)に対応して、2つの独立な解が得られる。$$x_1(t) = t^\nu \sum_{n=0}^\infty \alpha_n t^n\\ x_2(t) = t^{-\nu} \sum_{n=0}^\infty \beta_n t^n$$
この解はベッセル関数 \(J_\nu(x)\)と\(Y_\nu(x)\)に関連する。