26. 発振回路
発振回路は、特定の周波数で振動(発振)信号を生成する電子回路で、電子デバイスや通信機器などで広く使用されている。発振回路は、信号源なしで持続振動の信号を生成することができるため、周波数発生器やクロック発生器などのアプリケーションで利用される。一般的な発振回路にはさまざまな種類があるが、基本的な発振回路の構成要素は以下となる。
1)増幅回路: 発振回路においては、増幅要素が必要で、信号を増幅する機能を果たす。これは振動エネルギーの供給源となる。増幅回路は、通常、アクティブ素子のトランジスタ等で構成する。
2)正帰還回路: 発振回路は通常、一部の出力を入力にフィードバックすることによって振動を持続する。正帰還回路は、増幅回路からの信号の一部が入力に戻され、これが増幅されて再び出力に戻る構造となっている。
3)発振周波数を決定する要素: 発振回路は特定の周波数で振動する必要がある。このためには、特定の周波数でのフィードバック信号の位相や振幅を制御する要素が必要である。コンデンサやインダクタ、抵抗などの素子で構成されることが多い。
一般的な発振回路の例には、LC発振回路、RC発振回路、クリスタル発振回路、ピエゾ発振回路などがある。
発振の原理
図1に発信回路の構成を示す。発振回路は、増幅回路と正帰還回路から構成される。増幅回路は、入力信号を増幅して出力する。正帰還回路は、出力信号の一部を入力信号に戻す。また、正帰還回路では、帰還電圧\(v_f\)の位相と入力電圧\(v_i\)の位相が同位相になるように働く。回路内で生じた振動電流が増幅・正帰還を繰り返すことで、外部から入力信号を与えなくても回路内の共振周波数と等しい周波数をもった出力信号が得られる。
発振の条件
図1の発振回路の構成図で、増幅回路の電圧増幅度を\(A\)、正帰還回路の電圧帰還率を\(\beta\)とする。増幅回路の入力電圧\(v_i\)と帰還電圧\(v_f\)の関係は、$$v_f = A \beta v_i$$となる。発振を起こすための条件は、
1)帰還電圧\(v_f\)と入力電圧\(v_i\)が同相であること。つまり、正帰還になっていること。従って、\(A \beta\)の位相角は0、すなわち虚部が0である。
2)\(v_f\)が、\(v_i\)より大きいか等しいこと。つまり、\(|A \beta| \ge 1\)であること。
\(|A \beta | >1\)であると、基本的には出力は発散するが、実際の増幅回路では、入力がある程度以上大きくなると、電源電圧の制約上、出力は飽和するので、増幅回路の利得は1に近づき、発振の出力振幅は一定値に収束する。