29. カレントミラー回路
カレントミラー回路は、BJT、FETなどの能動素子を用いて、入力電流を一定の割合で複製する電子回路である。入力電流を基準電流と呼び、コピーされた電流をミラー電流と呼ぶ。カレントミラー回路は、電流源、アクティブロード、バイアス回路など、様々な用途に使用される。特に、高精度な電流源を実現するために多く使用される。
図1にカレントミラー回路の使用例として、オペアンプ(IC)の簡易等価回路を示す。ここで、カレントミラー回路は、差動増幅回路を構成している2つのFETに等しい電流を流す。このカレントミラー回路は差動増幅回路から見ると負荷抵抗として働くことになる。
カレントミラー回路の基本
カレントミラー回路は、一種の定電流回路である。図2にカレントミラー回路の基本構成を示す。基本的に2つのトランジスタのベース同士、エミッタ同士が接続されていると、当然、ベース電流、エミッタ電流は等しくなる。そのためコレクタ電流も等しくなる。その結果、ベース電流が十分小さいとすると、入力電流に応じて等しい出力電流が流れることになる。つまり、一方のトランジスタ\(Q_1\)の電流が変化すると、鏡に映したように他方のトランジスタ\(Q_2\)の電流も変化する。このことから、カレント(電流)ミラー回路と呼ばれる。
カレントミラー回路は、個別トランジスタで構成することは難しい。カレントミラー回路では、ペアとなる2つのトランジスタの特性が一致している必要があり、かつ、温度特性変化も等しい必要がある。このため、図1のようなICやLSI(集積回路)のように同一チップ上に実装するのに向いた回路である。
CMOSカレントミラー回路
図3にnMOSを使ったカレントミラー回路を示す。\(nMOS_1\)に電流\(I_{ref}\)が入力されることでゲート電圧\(V_G\)が決定され、これを\(nMOS_2\)のゲートに入力することで\(I_{ref}\)と同じ値の電流がコピーされて\(I_{out1}\)として出力される。
図2に示したBJT(バイポーラトランジスタ)で構成した回路とは異なりMOS-FETはゲートに電流がほとんど流れないため、1つの\(I_{ref}\)から複数の電流をコピーすることができる。また、電流のコピーだけではなくMOS-FETのサイズに比例して電流量を増減させることも可能である。
※IC上に構成するカレントミラー回路の詳細な解説は、「CMOSカレントミラーの基本」を参考にしてください。